現在、小学生にスポーツの指導をしていて感じることがあります。
それは、
「とにかく【脱力】出来ない子が多すぎる!」
地域や学年などでも違うでしょうし、たまたまチームにそういう子たちがたくさん集まっただけかもしれません。
脱力に限らず、様々な能力の低下を感じる昨今ですが、今回はスポーツのパフォーマンスをあげる、この【脱力】についてお話したいと思います。
そもそも脱力とは?
脱力とは、本来は「身体の力が抜けること」を言います。
ただ、スポーツにおいてヘナヘナ〜っと身体の力が抜けてしまうと何のアクションもできませんよね。
スポーツでいう脱力とは、
「重要なところには力が入り、余分なところに力を加えない」
ということは、不必要な力を抜いて、本来の理想的な動きをするということです。
よく、スポーツの場で監督やコーチから
「力を抜け!」、「もっとリラックスしろ!」
などと言われることがあると思うのですが、そもそも力を抜くということが出来ない、もしくは分からない子が多いんですよね。
というのも、子供本人が、自分の身体のどこに力が入っていて、どこの力をどれだけ抜けば良いのかが分かっていないのです。
なので、脱力だ!という前にどこの力が必要で、どこの力が不要なのかを理解する事が重要になります。
逆に「力む」とはどういうことか。
力むとは、「必要以上に力が入っていて、身体が緊張状態」のことですね。
身体がガチガチですから、本来の50%も実力がでるかどうかです。
そして、無駄に体力を消費させてしまうので、疲れやすくなってしまいます。
意識してなくても勝手に力は入るのに、勝手に力は抜けませんよね。
勝手にちからがぬけたら、それは失神です(笑
「脱力」は「力を入れる」ことより難しいのです。
脱力が出来ない子供の特徴
- 体幹がしっかりしていない
- 一つのもの(こと)にしか集中できない
- 日常生活でも動きが硬い
- 幼少期にたくさん身体を使って遊んでこなかった
- (親に言いたいことを言えない)
まず第一に「体幹がない」
これが一番の問題になってきます。
後述しますが、運動機能において身体の背骨と同じ役割です。背骨がないと軟体動物のようにクネクネしてしまい必要な力を入れる事も難しくなります。
あとは、1つしか集中できないのは、アレコレできない超不器用さんですよね。「ながら行動」が出来ない…男性が女性に対してよく不思議に思うような「雑誌を読みながらマニキュアを塗る」みたいな「〜しながら〇〇をする」
一見行儀が悪いような事でも実は大事なんですね。
他に、日常で動きが硬い子は、膝を使わない結構な「ガニ股」さんが多いと感じます(全員が全員ではないと思うのでご理解を)
日常的な動きの悪さは、幼少期の遊びが影響しているのではないかと思っているのですが、飛んだり、登ったりと自然の遊びが少なかった子も脱力ができない子が多いです。
最後のカッコはオマケです。
遊びが足りない、もしくは親が何でも先回りしてやってあげちゃう…子供が自然と身につける事を親が潰しちゃうパターンですね。
これらに当てはまると、もしかしたら従来の力を発揮できていないかもしれません。
緊張によるガチガチも、ある種同じですよね。
では、「脱力」することによって何が良いのか説明したいと思います。
脱力によるメリット
・無駄な力が抜けて、本来の実力(場合によっては実力以上の力)が発揮できる
・一つひとつの動きが安定する
・最大の体力を使い切ることができる
などが挙げられます。
脱力ができないと、これらの逆のことしかできないということです。
- 力んで、本来の実力が発揮できない
- 動きが安定しないから、良いプレーに繋がらない
- 無駄に体力を削ってしまい、動くべきところで動けない
これらは、スポーツにおいては致命的と言えるでしょう。
たとえ、良い素材を持っていても脱力が出来ないことによって、それらを活かしきれなくなってしまいます。
負けるのは悔しいし、勝負の世界では勝ちたいという気持ちを持つでしょう。
では、その実力を発揮するのに必要な脱力をできるようになるには、どのような事が大事なのかをお話したいと思います。
脱力に必要なこと
脱力が自然と出来るようになるには必要不可欠です。最初にも書きましたが、これがないと始まりません。
・体幹
なぜ、体幹がないと脱力できないのか?
体幹とは何なのか、その役割を少し説明します。
《体幹とは》
体幹とは、身体の中心である軸のことを言います。
運動機能の中心となる部分を指すんですね。
運動機能の中心とは、「胴体」や「腹筋、背筋」などの筋肉の部分です。
その運動機能の中心の「深層部分」が体幹となります。インナーマッスルと呼ばれてます。
「体」の「幹」と書いて「体幹」ですからね。読んで字のごとくです。
木と同じ様なもので、土より下の根っこ部分は「重心」。土から上に伸びる幹が「体幹」。そして様々な方向へ伸びる枝が「手足」と思って頂いて良いでしょうか。
中心である幹が、か細くヘニャヘニャだったら枝が伸びる所か木は倒れてしまいますよね。
幹が図太くシッカリしていると、枝は好きな方向へたくさん伸びていきます。
他にも、棒人形とゴム人形で試すと分かるのですが、割り箸(などの棒)にヒモで手足をつけた「棒人形」逆に胴体部分がゴムにヒモの手足をつけた「ゴム人形」
回転させたり上下に動かすと手足の動きに違いが出ます。
「棒人形」は自然の動きを発生させるのに対し「ゴム人形」は自然の動きを発生させにくいのです。
人も左右に身体を回転されると腕が自然と動きますよね?
体幹がシッカリ身につくと、その自然な動きを発生させる事が出来る様になるのです。
そして、もう一つ。
・身体を知る
準備体操やストレッチなどをしている途中で、子供たちに「ストップ!今どこが伸びてる?」などと質問をする事があるのですが、分かっていない子が多いんです。
なので、足なら足。腕なら腕をグーっと力を入れさせたり、ストレッチで伸ばした部分を触りながら何処にどんな風に力が入っているのか。
入ってない部分があるか、または力を入れさせたい部分にはどういう方向でどうやれば力がはいるのかなどをやらせてみる。
そういった部分的な事から身体全体へと広げていくと良いですね。
この二つが出来ていないと、
- 思ったようなパフォーマンスをあげられない
- 必要以上に体力を消耗する
- プレーが安定しない
- 怪我をしやすい
などといった事になってしまうのです。
最後の「怪我をしやすい」というのは力を程よく抜く「クッションの役割」が出来ないので、車の衝突事故のような固いものと固いものがぶつかるというものですね。
または、足がひっかかり転倒しそうになった場合「バタンっ」とそのまま転んでしまうのは力が入りすぎ、かつ体幹がなく支えきれないせいですね。
脱力ができるようになる方法
実はネット上に載っているような「脱力が出来るようになる方法」を、いくつか子供達に試したことがあります。
例えば、
・腕を頭の上に伸ばし全身に力を全力で入れ力を抜く方法
ドラゴンボールでいう元気玉を作る感じです。それに背伸びをするように足先指先まで力を入れて、ストンっと力を抜き膝が軽く曲がり腕を落とすものです。
力は入れられるのですが、腕をストンと落とせないんですね。
・仰向けに寝て手足を上げ落とす方法
よく浮腫みを取る方法で知られている方法です。
仰向けの状態から手足をあげプラプラ〜と…もしくは上げた手足にうんと力を入れその状態から手足をバタンと落とす。
これは胴体部分を安定させているので良いのですが、やはり落とすことが出来ない。
など、いくつか試したものの「そもそも力を抜けない」のですから力を入れた手足をストンと落とせないんですよね。
上記のように「力を入れる」事と「力を抜く」事を同時にやろうとすると子供は難しいのです。
大人なら簡単に出来そうなことも子供にとっては簡単にはいかないことが多いのです。
では、小学生などの子供向けとは
・息を大きく吸って止めさせる
やってみると分かるのですが、大きく息を吸わせて「止めて!」というとグッと力を入れて止めるんですよね。
しばらく止めた状態から「はい、いいよ〜」(吐いて〜とは言わない)と言うと「はぁ〜」と息を吐きます。
その状態が脱力です。
原理としては、「力を入れる」時は「息を止める」ことが多い。逆に「力を抜く」時は「息を吐く」事が多くなります。
これは大人でも同じかと思います。
なので、まずは自然に起こる現象から身につけさせる…身体を反応させる事が大事になってきます。
そこから「身体を知る」でも書いたように力の入っている部位や入れ方などを知り、先述のような方法を試していくのが良いでしょう。
脱力に関する疑問点
近年は、どの家庭も幼少期から様々な習い事をさせていると思います。
その中でも多いのが「ピアノ」
音感やリズム感など身につけて損はないものですよね。
ただ、そのピアノに関して疑問が浮かんだのです。ピアノといえば「脱力」というイメージですが、ピアノを習っている子に限ってほぼ脱力ができない。というもの。
全力で最初から最後まで弾いているのでしょうか…
卒部して中学生になった今も出来ていない様子の子もいます。
他にも水泳やダンス。
どれも脱力必須のように思いますが、最近の習い事はそういった身につけるべきものは重要視されていないんですかね。
それとも、もともと幼少期に自然の遊びをあまりせず過保護になんでもやってあげちゃう親の問題なのでしょうか。
ちなみに過保護も良くないですけど、脅威を与えるような自分の機嫌に任せた叱る行為も緊張状態を作り上げてしまうので良くないですね。
何でもかんでも「子供の本位」ではなく「親が習い事や周囲の関係を決めつけてしまう」というものですね。
まずは、親がその習い事の時の子供の状態を知ることです。
さいごに
脱力とはスポーツにおいて最高のパフォーマンスをあげるには欠かせないものだと思います。
スポーツ以外でも将来何かと役に立つものです。
そして、子供とは産まれたときからそういった能力を自然と身に付ける事ができるのです。
その環境を作ってあげるのが親の役目です。
今あなたの子供がスポーツや他の習い事において、いくらやっても上達しないと思っているのであれば、今までどういう環境作りをしてきたか思い返してみてください。
子供が自然と身に付けるべき能力の環境を考えてきましたか?
ただ習い事をさせるだけではなく、それらを上達するためにはどんな能力を必要とするのか、子供は基本的な動きや考えがどの程度身についているのか。
一緒に考えながら「子供」と「親」が共に成長していくのが「習い事」ではないでしょうか。
少しでも多くの子供達が「脱力」を身につけて最高のパフォーマンス・結果に繋がることが何より幸いです。
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